各社が受け継いできた伝統をどのように現代へと発展させているのか、その個性あふれる取り組みとデザイナーとの出会い、そして「金色の手」発足に至るまでの歩みをご紹介します。
伝統は、今をつくり続けることで未来になる
愛知・岐阜を拠点に伝統工芸に携わる4社は、2023年「Creation as DIALOGUE」 のメンバーとして、パリで開催された国際見本市「Maison & Objet(メゾン・エ・オブジェ)」への出展を契機に、分野を越えた新たな交流をスタートさせました。 仏壇、雛人形、提灯・雪洞、印章——それぞれ異なる領域で技を磨いてきた職人たちが出会い、互いの思想や技術に触れることで、新たな創造の可能性が生まれています。
共に世界へ挑んだ伝統工芸士たち
2021年、名古屋市による伝統工芸プロジェクト「Creation as DIALOGUE」が始動。 選抜された伝統工芸士たちは、ヨーロッパ在住の日本人デザイナーと出会い、パリでの新作発表に向けてそれぞれの挑戦を重ねていきました。
2022年には、パリの歴史的アーケード「Galerie Vivienne」にて初の展示会を開催。イタリア・トリノのセレクトショップ「San Carlo 1973」や、パリを代表する「Leclaireur」などが来場し、現地の高い関心を集めました。あわせて行われたワークショップでは、職人たちの手仕事に向けられる来場者の真摯な眼差しが印象的でした。
そして2023年、世界最高峰のインテリア&デザイン見本市「Maison & Objet」に出展。ハイエンドブランドや先鋭的なデザイナーが集うホール7にて発表されたプロジェクトは、国内外の来場者に強い印象を残しました。 各社の「らしさ」とデザイナーの感性が融合することで、手仕事の力が国境を越えて伝わることを実感する機会となりました。同時に、伝統とは決して過去の遺産ではなく、つくり続けることで更新されていく「生きた文化」であることが改めて浮かび上がりました。
そして、新たな物語へ
2025年、「Creation as DIALOGUE」に参加した4社の職人とデザイナーが名古屋で再会。 素材も歴史も技法も異なる彼らに共通しているのは、「伝統の価値をいかに現代に生かすか」という問いに向き合い続けている点です。
長い年月をかけて培われてきた技と、そこに宿る職人の精神。その価値に深く共鳴するイタリア在住のデザイナー・古川紗和子をディレクターに迎え、未来へとつながる新たな取り組みが動き出します。
受け継がれてきた手のぬくもりと、教えの余韻。 そのすべてを未来へとつないでいくために——
「金色ノ手」プロジェクト coming soon
イタリアを拠点に、ハンドバッグデザイナーとして17年にわたりDIOR HOMME、VERSACE、BOTTEGA VENETAなど欧州ラグジュアリーメゾンに携わってきました。各メゾンにおいてコレクション開発を担い、手がけた多くのバッグはベストセラーとして高い評価を得ました。2021年よりデザインディレクターとして活動を開始。プロダクトやテキスタイルをはじめとする領域において、職人や企業との協働を通じ、受け継がれてきた技術と精神性を、現代の感性と融合させ進化へと導いています。2026年より、銀座和光オリジナルバッグコレクション「SUIHA」のブランディングとデザインディレクションを手がけ、さらなる活動を広げています。
1921年創業、岐阜市梶川町に工房を構える提灯・ぼんぼり・水うちわの専門店。塗装・貼り・絵描きまで一貫生産できる体制を持ち、お祭り用提灯、店舗などの看板提灯、雛人形のぼんぼり、仏前の灯り、水うちわなど、特注制作や修理を幅広く手がけています。現社長・安藤幸延は「名古屋節句飾」ぼんぼり部門における日本唯一の伝統工芸士。伝統の灯りを現代のライフスタイルへつなぐ企画を多数生み出し、2026年にはパリ「Maison & Objet」に単独出展。提灯・ぼんぼりの技術を生かしたインテリア提案を世界へ発信しています。
1967年創業。愛知県扶桑町にて、雛人形専門工房を創立。 伝統的工芸品「名古屋節句飾」の雛人形を、六十年にわたり受け継ぎ、守り続けてきました。北川慎也「二代目 芳峰」は義父である初代に師事。名古屋節句飾「人形胴体部門」伝統工芸士として活動。人形コンクールにおいて最高賞を受賞。
熟練の職人が細部にまでこだわり、一体一体丁寧に仕上げる雛人形は、フルオーダーにも対応。衣装や屏風、お道具を自由に組み合わせ、ご家族の想いをかたちにする「世界に一つだけのひな飾り」として、多くの方に選ばれています。
また、パリで開催された展示会では、節句文化が持つ繊細な美しさと、日本の手仕事ならではの温かみが来場者の心を捉え、高い評価を得ました。
1953年創業、名古屋市西区の印章専門店〈古橋三栄堂〉から生まれた、二代目印章彫刻士・古橋宏と、その娘である増田彩によるユニットブランド「スミレ堂」。伝統工芸に新たな価値をもたらすことを目指し、2017年に誕生しました。 手書き文字と手彫りの技術によって、唯一無二の印章を一つひとつ丁寧にお作りしています。 「美しい手仕事には、時代を超える力がある」 その信念のもと、名を大切に想う方に寄り添い、名をカタチにする“祝いの時間”をお届けします。 そのひとときが、名を想う心と響き合い、やさしい豊かさとして静かに満ちていきますように。